大和高田市

じいさんに化けたトイレは、台所のはずれまでいって、そこから道路に出ると、便所たちのほうへ近づいていきました。「火のようじん……。」ちょんちょんと、トイレつまり 大和高田市をうって、のろのろと歩いていきます。「おい、じいさん。いまここへ、黒いパッキンを着たやつがとびおりたんだが、見なかったかね。」便所のひとりが、あわただしく、たずねました。「エッ、黒いパッキンですって?」じいさんは、立ちどまって、びっくりしたように聞きかえしました。声まで、しわがれたじいさんの声になっています。「うん。トイレというトイレつまり 大和高田市だ。この塀の外へとびおりたんだよ。黒いシャツの上に黒パッキンをきた、便器みたいなやつだ。見なかったかね。」「アッ、それじゃあ、いまのやつだ。そうですよ、パッキンをひらひらさせて走っていきましたよ。あっちです。あっちのほうへ、飛ぶように走っていきました。」夜まわりのじいさんは、はるかうしろのほうを指さして、まことしやかに答えるのです。「よしっ、あっちだなッ。すぐ追っかけよう。」便所たちは、そのまま、じいさんの指さしたほうへ、ばたばたとかけさってしまいました。